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なぜ超加工食品はやめられないのか

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🎥 元動画: Here's Why You're Addicted to Ultra-Processed Food | Chris van Tulleken | TEDxNewcastle — TEDx Talks
超加工食品(UPF)は英国の平均的な食事のエネルギーの約57%を占めるとされ、現代食の中心になっている(Rauber 2018)。 摂取カロリーや栄養素をそろえても、UPF食では1日あたり約500kcal多く食べてしまうことが入院下のランダム化比較試験で示された(Hall 2019)。 問題は意志力より「食の設計」にあり、繊維の少なさや乳化剤などの添加物が腸内細菌の多様性を削る方向に働きうる。 土の単一栽培が地力を痩せさせるように、繊維の乏しいUPF中心の食は腸内生態系を「単一栽培化」させる、というのが本記事の見立て。

TL;DR

超加工食品(UPF)は、もはや「たまの嗜好品」ではなく現代食の主役になっている。英国では食事エネルギーの約57%がUPFという報告もある。問題は「食べる人の意志が弱い」ことではなく、「食そのものが食べ過ぎるよう設計されている」ことにある——感染症医のクリス・ファン・トゥレケンはそう問題提起する。畑の側から見ると、これは繊維という肥料を抜かれた腸内生態系が、地力を失った単一栽培の畑のように痩せていく話に重なる。

超加工食品は、もう「特別な食べ物」ではない

トゥレケンの講演でまず突きつけられるのは、UPFが現代食の中心だという事実だ。NOVA分類でUPF(第4群)に入る食品は、英国の平均的な食事エネルギーの約57%を占めると報告されている(Rauber 2018)。米国でもおおむね同程度の水準が示されてきた。

ここで誤解しやすいのは、UPF=ジャンクフードではない、という点だ。市販の食パン、朝食用シリアル、ビスケット、一部の乳製品、多くの調味料——一見ふつうの主食や常備品の多くが、工業的に組み立てられたUPFに分類される。NOVA分類でいうUPFとは、食品から抽出・改変した成分と添加物を中心に作られ、家庭の台所では再現できない製品群を指す(Monteiro 2019)。

これは畑の話に置き換えると分かりやすい。かつて畑にあった多様な在来作物が、流通と保存に最適化された数品種の単一栽培に置き換わっていったのと同じ構図だ。効率と均質さを優先した結果、私たちの食卓もまた「単一栽培化」している。

「意志力の問題」という説明はどこで破綻するか

「太るのは食べ過ぎるから、食べ過ぎるのは自制心が足りないから」——この説明は分かりやすいが、トゥレケンはそこに疑問を投げる。そして、その疑問を最もきれいに支えるのが、米国NIHのケヴィン・ホールらによる入院下のランダム化比較試験だ(Hall 2019)。

この試験では、被験者をUPF中心の食事と未加工中心の食事に2週間ずつ割り当てた。重要なのは、両方の食事をカロリー・糖・脂質・塩分・繊維・三大栄養素までそろえた点だ。条件をそろえてなお、UPF食のときに被験者は1日あたり約500kcalも多く食べ、体重も増えた。逆に未加工食では自然に食べる量が減り、体重は落ちた。

つまり「何を食べるか」だけでなく「どう設計された食か」が、摂取量そのものを動かしていた。意志の強弱の前に、食の構造が効いている——畑でいえば、土壌が痩せていれば作物の出来は農家の努力以前に決まってしまうのと同じだ。

設計された食が腸内環境を「単一栽培化」させる

ではUPFは腸の側に何をするのか。ここは断定を避けて、分かっていることだけを並べたい。

第一に、繊維の不足だ。UPFの割合が高い食事ほど、繊維・たんぱく質・カリウムが減り、糖・飽和脂肪・塩分が増える傾向が英国データで示されている(Rauber 2018)。腸内細菌にとって食物繊維は主要なエサ——いわば「肥料」にあたる。肥料が減れば、それを糧にする多様な菌が育ちにくくなる方向に働く、と考えるのは自然だ。

土の世界では、有機物(腐植)を畑に返さずに収奪を続けると、微生物相が単純化し、地力が痩せていくことが知られている。繊維という腐植を欠いた食は、腸という畑に同じことを起こしうる。これがUPFによる腸内環境の「単一栽培化」という見立てだ。

乳化剤という「見えない添加物」と粘液層

第二に、添加物そのものの影響がある。なかでも注目されてきたのが乳化剤だ。乳化剤は水と油を混ぜて口当たりを良くするためにUPFへ広く使われるが、ここに腸との接点がある。

シャサンらの研究(マウス)では、一般的な食品乳化剤を与えると、腸を覆う粘液層が薄くなり、細菌が腸の上皮にこれまでより近づき、菌の組成が変化して炎症や代謝異常が促されたと報告された(Chassaing 2015)。腸の粘液層は、畑でいえば作物の根を覆い、病原菌から守る健全な土の表層に近い。その層が薄くなれば、本来は距離を保つべき菌が根(上皮)に迫ってしまう。

ただし強調しておきたいのは、これは主に動物実験の知見であり、ヒトでの長期的な影響はまだ研究途上だということだ。「乳化剤入りを食べたら腸が壊れる」という話ではない。あくまで「現代食に偏在する添加物が、腸内生態系にとって中立とは限らない」という慎重な注意喚起である。

畑として腸を耕す——割合を下げる、土台を厚くする

ここまでを踏まえた実践は、極端な排除ではなく「割合の調整」に尽きる。UPFをゼロにする必要はない。研究が示すのは、UPFの比率が高いほど食事の栄養の質が下がりやすいという傾向だからだ(Rauber 2018)。

畑を立て直すときと同じ順番でいい。まず腐植(繊維)を返す——野菜・豆・全粒穀物・海藻を土台に据える。次に多様な菌を入れる——発酵食品を日常に置く。そのうえで、UPFは「主食」から「ときどきの一品」へと位置を下げる。土台が厚くなれば、多少のUPFが入っても生態系は揺らぎにくくなる。

意志力で我慢する戦いではなく、腸という畑の地力を上げる戦いに切り替える。これがトゥレケンの問題提起を、私たち食べる側が引き取るときの現実的な落とし所だと思う。

ひとこと(畑の視点で)

読者: UPFが英国食の半分以上って、そんなに食べてる実感がないんですが。

土井: そこが怖いところでね。菓子パンやシリアル、市販の合わせ調味料みたいな「ふつうの顔をしたUPF」が大半を占めてる。畑でいえば、気づかないうちに在来種が消えて数品種ばかりになってた、というのに近い。

読者: じゃあ全部やめるべき?

土井: いや、引き算より足し算で考えたほうがいい。繊維と発酵食品で土台を厚くすれば、腸という畑の地力が上がる。地力さえあれば、UPFが多少入っても揺るがない。我慢じゃなくて、耕す方向です。

元動画

クリス・ファン・トゥレケンはオックスフォードで医学、UCL(ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン)で分子ウイルス学の博士号を持つ感染症医・UCL准教授で、企業活動が人の健康に及ぼす影響を研究している。本記事は同講演を起点に、主張を一次研究で裏取りしたうえで土壌↔腸のアナロジーで再構成したものであり、講演内容の逐語的な要約ではない。

出典

  • Rauber F, da Costa Louzada ML, Steele EM, Millett C, Monteiro CA, Levy RB. 2018. Ultra-Processed Food Consumption and Chronic Non-Communicable Diseases-Related Dietary Nutrient Profile in the UK (2008–2014). Nutrients 10(5):587. DOI: 10.3390/nu10050587
  • Hall KD, Ayuketah A, Brychta R, et al. 2019. Ultra-Processed Diets Cause Excess Calorie Intake and Weight Gain: An Inpatient Randomized Controlled Trial of Ad Libitum Food Intake. Cell Metabolism 30(1):67–77.e3. DOI: 10.1016/j.cmet.2019.05.008
  • Chassaing B, Koren O, Goodrich JK, et al. 2015. Dietary emulsifiers impact the mouse gut microbiota promoting colitis and metabolic syndrome. Nature 519:92–96. DOI: 10.1038/nature14232
  • Monteiro CA, Cannon G, Levy RB, et al. 2019. Ultra-processed foods: what they are and how to identify them. Public Health Nutrition 22(5):936–941. DOI: 10.1017/S1368980018003762

よくある質問

超加工食品(UPF)とは何ですか?
超加工食品は、食品から抽出・化学的に改変した成分や添加物を中心に工業的に組み立てられた製品を指す分類で、NOVA分類の第4群にあたります(Monteiro 2019)。 砂糖・油・でんぷん由来の成分に、乳化剤・着色料・香料などを加えて作られ、家庭の台所では作れない原材料を含むのが特徴とされます。 具体的には市販の菓子パン、清涼飲料、スナック、加工肉、即席麺、多くの調味料などが該当し、英国食では総エネルギーの約57%を占めると報告されています。
超加工食品が腸内環境に良くないとされるのはなぜですか?
第一に食物繊維が乏しく、腸内細菌の主要なエサが不足しがちな点が挙げられます。繊維は腸内細菌の「肥料」にあたり、不足すると多様性が下がる方向に働くと考えられています。 第二に乳化剤などの添加物です。動物実験では一部の乳化剤が腸の粘液層を薄くし、細菌の組成を変えて炎症を促した例が報告されています(Chassaing 2015)。 ただしヒトでの長期影響はまだ研究途上であり、「UPFを食べると必ず腸が悪くなる」と断定できる段階ではありません。傾向として注意したい、という位置づけです。
超加工食品を完全にやめないといけませんか?
完全排除を目標にする必要はありません。研究が示すのは、UPFの割合が高い食事ほど繊維やたんぱく質が減り、糖・脂質・塩分が増える傾向があるということです(Rauber 2018)。 現実的には、繊維の多い未加工・最小限加工の食品(野菜・豆・全粒穀物・発酵食品)を土台に据え、UPFの「割合」を下げる方向が無理なく続けやすいアプローチです。 体調や持病に不安がある場合は自己判断で極端な食事に走らず、医師や管理栄養士に相談してください。

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