結論から: サプリは速効性の化学肥料に似ている——便利だが、それだけでは土(腸)は育たない。食事の多様性が第一。ただしフルーツ・ナッツ中心食には鉄分・葉酸・ビタミンB12が不足しやすい構造的弱点があり、そこはサプリで補うのが合理的。イヌリン・乳酸菌は「補助輪」として目的別に使い分ける。
第一講から第四講まで、食べ物の話をしてきた。多様な植物を食べる。フルーツ中心の食事にする。プレバイオティクスを意識する。
では、サプリメントはどう考えるべきか。
農家として言うと、サプリは「速効性の化学肥料」に似ている。短期間で効果が出ることがある。便利で、定量管理しやすい。でも、それだけに頼ると土は——腸は——育たない。化学肥料を毎年入れ続けないと作物が育たない畑は、自立していない畑だ。
同じように、サプリだけで腸を維持しようとするのは、根本の解決にならないと思っている。
ただし、補助輪としてのサプリは合理的だ。自転車を覚える時期に補助輪は必要だ。食事が整っていない時期、出張や旅行で発酵食品や野菜が摂れない時期、食物繊維量を具体的に数値で管理したい時期——そういう場面でサプリは力を発揮する。
私がサプリを使う場面
正直に言う。サプリは「毎日欠かさず」ではなく、目的ごとに使い分けている。
イヌリン(寝る前)
就寝前に、イヌリン粉末を水に溶かして飲む。寝ている間に腸内細菌がゆっくり発酵する時間を確保できる気がして、この習慣が定着した。出張や旅行でフルーツ・野菜が思うように食べられない日の保険にもなる。
乳酸菌サプリ(ローテーション)
乳酸菌・ビフィズス菌系のサプリはいくつかのブランドをローテーションしながら飲んでいる。同じ株を飲み続けるより、種類を変えて届ける菌を多様にするほうが合理的だと考えているからだ。土に一種類の肥料しか入れないより、多様な有機物を混ぜるほうが良い——あれと同じ発想だ。
フルーツ食の弱点と補い方
フルーツ中心の食事には弱点がある。農家として正直に書く。
フルーツ・ナッツ中心の食事は食物繊維と抗酸化物質が豊富だが、鉄分・葉酸・ビタミンB12が不足しやすい。特にビタミンB12は植物性食品にほぼ含まれない。これはフルーツ食の構造的な問題であり、「気をつければ食事だけで補える」という話ではない。
私はこれらをサプリで補っている。食事の多様性で解決できない栄養素は、サプリが本来の「補助」をする場面だ。「食品が第一」という原則は守りながら、サプリを使うべき場所ではちゃんと使う——それが現実的な答えだと思っている。
選ぶなら何を使うか
食物繊維サプリにはいくつか種類がある。それぞれ、腸内細菌に届く繊維の性質が違う。
イヌリン
チコリ根や菊芋由来の水溶性食物繊維。ビフィズス菌の基質として報告が多い。無味無臭に近く、飲み物やヨーグルトに溶かして使いやすい。機能性表示食品として含有率94.7%のものも市販されている。
難消化性デキストリン
トウモロコシ由来の水溶性食物繊維。溶けやすく、飲み物に混ぜやすい。トクホ(特定保健用食品)系の飲料にも広く使われている成分だ。
乳酸菌・ビフィズス菌サプリ
生きた菌を届けるプロバイオティクスの代表。ただし、多くの場合、摂取をやめると腸内から検出されなくなる——つまり定住ではなく「通過」として働く一時的な助っ人だ。継続して摂り続ける前提で使うか、発酵食品(ヨーグルト・味噌・キムチ等)で代替するほうが長期的には理にかなっている。
サプリを使うときの注意点
食物繊維サプリは急に増量すると、ガスや腹部膨満感が出やすい。腸内細菌が急増する際の発酵によるものだ。少量から始めて、1〜2週間かけて増やすのが基本だ。
また、イヌリンはFODMAP(発酵性の糖質・食物繊維群)に分類される。過敏性腸症候群(IBS)の傾向がある場合は慎重に使う必要がある。
Loam の立場
畑でも最終目標は「自然に豊かな土」だ。外から肥料を補充し続けなくても、有機物が循環して微生物が育つ土。それが理想だ。
腸も同じで、最終的には食事の多様性と発酵食品で腸内細菌を維持できる状態が理想だと考えている。サプリはそこへ向かう途中の補助輪として使う。補助輪をつけたまま一生走り続けるのではなく、いずれは食品だけで回せるようにする——それがLoamの目指すゴールだ。
第六・七講について
第六講では実際にMykinso(マイキンソー)で腸内フローラを検査した記録を、第七講では1年単位の腸の変化と季節との関係を書く予定だ。検査結果が出てから追記する。
第六講・第七講は準備中。マイキンソーの結果が届いたら更新します。
出典
- Gibson, G. R., Hutkins, R., Sanders, M. E., et al. (2017). ISAPP consensus statement on the definition and scope of prebiotics. Nature Reviews Gastroenterology & Hepatology, 14(8), 491–502.
- Hill, C., Guarner, F., Reid, G., et al. (2014). ISAPP consensus statement on the scope and appropriate use of the term probiotic. Nature Reviews Gastroenterology & Hepatology, 11(8), 506–514.
- Sonnenburg, J., & Sonnenburg, E. (2015). The Good Gut. Penguin Press.
- 厚生労働省(2020). 日本人の食事摂取基準2020年版.
本講義は一般的な科学情報の提供を目的としたものであり、特定の疾患の治療・予防を保証するものではありません。食事変更は個別の健康状態によって影響が異なるため、疾患をお持ちの方は医療専門職にご相談ください。
よくある質問
- サプリと食品、どちらが腸活に重要ですか?
- 食品が第一でサプリは補助輪、というのが農家としての立場。サプリは速効性の化学肥料に似て短期的に効くが、それだけに頼ると土(腸)は自立して育たない。食事の多様性で土台をつくり、サプリは目的別の補助に留めるのが長期的に理にかなう設計だ。
- フルーツ中心の食事に弱点はありますか?
- 食物繊維と抗酸化物質は豊富だが、鉄分・葉酸・ビタミンB12が不足しやすい構造的弱点がある。特にビタミンB12は植物性食品にほぼ含まれず、食事の工夫だけで補うのは難しい。ここはサプリが本来の「補助」をする領域であり、原則を守りつつ必要箇所では使い分けるのが現実的。
- イヌリンと難消化性デキストリンはどう違いますか?
- どちらも水溶性食物繊維だが由来と特性が異なる。イヌリンはチコリ根や菊芋由来でビフィズス菌の基質として報告が多く、寝る前に水へ溶かして使いやすい。難消化性デキストリンはトウモロコシ由来で溶けやすく、トクホ系の飲料に広く使われている。目的に応じた使い分けが合理的。
- プロバイオティクスサプリは続けないと効果がなくなりますか?
- 多くの場合そうだ。乳酸菌・ビフィズス菌サプリの株は摂取をやめると腸内から検出されなくなることが多く、定住ではなく「通過」の一時的な助っ人として働く。継続前提で使うか、ヨーグルト・味噌・キムチなどの発酵食品で代替するほうが長期的には理にかなう。
- 食物繊維サプリでお腹が張る場合はどうすればいいですか?
- 急増量によるガス・腹部膨満は腸内細菌の発酵が原因で起きやすい。少量から始めて1〜2週間かけて増やすのが基本だ。またイヌリンはFODMAPに分類されるため、過敏性腸症候群(IBS)の傾向がある場合は慎重に。症状が続くなら医療機関に相談するのが安全な選択。